突然顕れた「世界史分岐点」  文科系

15日の中日新聞社説『破壊のつけは我が身に 孤立するアメリカ』は、標記のような内容をさえ持った世界情勢分析とも言えるものになっていると思う
 5月26日「アメリカの孤立」エントリーとか、トランプ追跡やその当選の意味とかなど、僕もここで同じ論点を展開してきたからこそ、なるほどと思いながらこの主張を、ここに描いてないことも色々、数々思い巡らせながら、読み直した。内容を要約して、世に広く訴えてみたい。
 正確な知識は構造を成しているものというが、これだけ時間、空間が広い論述も、毎日のニュースを伝えることを主任務とする新聞としては珍しいほどのもののはずだ。


 まず、書き出しはこの記事の要約にあたるもの。こんな表現からして、世界史的重大事が今起こっていると判る。
『今や米国は世界の深刻な不安要因である。トランプ大統領がいそしむ秩序破壊の後には混乱が広がる。そのつけは自身に返ってくることを悟るべきだ』


 これに続く内容が、米国の世界史的威信が急落しているという数字と、今回G7におけるアメリカの孤立。特に、この下りが重要だろう。
『トランプ政権がカナダはじめ欧州連合や日本という同盟国に導入した鉄鋼・アルミニウムの輸入制限の理由に、よりによって安全保障を挙げたことを批判した発言だ。
 敵国同然の扱いをされたと怒るカナダと欧州は報復する構えだ。貿易戦争に発展しかねない雲行きである』
 こういう理解から、G7開催国カナダのトルドー首相が総括記者会見でこう述べることになったのだった。
『米国が安全保障を理由にすることを軽く見るわけにはいかない。これは侮辱だ』

 この直後の論述として第二次大戦後の世界経済体制の構築経緯、解説が続いた上で、こういう中間の締めが行われている。これは、戦後世界史にとって大変な表現ということになる。
『米国自身が大きな恩恵を受けたこうした経済体制を、トランプ氏は壊しにかかっている』

 次に続く記事内容が、こういうG7に対して同時に開かれた中ロ中心の上海協力機構の事。G7がこんな分裂を呈していて「自由と民主主義」世界は一体どうなるのかという悲鳴のようにも聞こえる。
 そして、この社説全体の最後はこうなっている。
『破壊した後にどんな世界をつくる考えでいるのか。トランプ氏の場当たり的で一貫性に欠ける言動からは、そんなビジョンはうかがえない。
 責任あるリーダーの座から降りた米国。この大変動を乗り切るために日本も選択肢をできるだけ増やして外交政策の可能性を広げる必要がある』


 ここからはさて僕の今日の文章になるが、こういう世界史急変の根っこを考えると、さらに深刻な気分になっていた。まず、この社説中にすらあったこんな文章。
『独善と身勝手で米国を孤立に追いやるトランプ氏。それでも支持率は持ち直し四割台に乗った』
 こんなトランプにアメリカ国民の支持が一定数かつかなり熱烈に存在しているのである。日本をはるかに凌駕した不安定労働者らアメリカ国民の政治を見る目先をば、トランプが一定捉えているということだろう。このことから、1929年の世界大恐慌以降の世界狂乱期に「世界に冠たるドイツ」を掲げて急台頭してきたヒトラーの、その栄光と瓦解との歴史が思い出されてならない。人類や世界史が何も見えていないポピュリズム権力が勃興して人類を蹂躙した上に、まるで世界と心中しかけたような出来事であった。