改めて、アメリカの世界戦略  文科系

アメリカが世界の平和を支えてきた」とか、「中国、ロシア、イランなどが今後世界不安定の要因」とかを骨子とするアメリカの「国際情勢理論」の本当の背景、出所は、別にあると思う。ちょうど、イラク戦争の本当の原因が「大量破壊兵器の所持」ではなくって、フセイン原油のドル支払体制を崩し始めたことだと言われて来たように。また、シリア内乱工作の原因が、化学兵器使用・市民弾圧などにあるのではなくって、「敵は本能寺」よろしく「アメリカの仇敵イランを滅ぼすための前哨戦、その友邦国を滅ぼしてイランを丸裸にするために」だったというように。ちなみに、アメリカにとってこのイランとは、フセインと同じく原油=ドル支払体制を崩した国であり、同時に国王政を倒したことによってアメリカの友邦サウジやUAEから忌み嫌われている国である。つまり、ベネズエラと並んで、アメリカの世界原油政策の鬼子! この両国原油埋蔵量は、ベネズエラが1位、イランが4位である。
 ちなみに、国連と、その下の圧倒的に多くの国の反対を押し切ってイラク戦争を敢行し、有志参戦国イギリスが深刻かつ重大な反省書をまとめたことに示されているように、そして今またイラン戦争瀬戸際に追い込んでいるように、アメリカが世界の平和を保ってきたなどは、余りにも明白な、嘘である。

 アメリカの真の世界戦略、思惑はこういうことだろうと、以下ごく短く、4点にわたってまとめてみる。

①短期金融転がし株主資本主義から物経済がすっかり駄目になって、産軍と、石油=ドル体制、およびGAFAのバブル株価が今のアメリカを辛うじて支えている。軍隊、兵器輸出なども含めれば、今のアメリカ経済の半分は、軍事で持っていると言われてきた。なにしろ、その軍事費は、冷戦時代の2倍を優に超えているのだから。物経済不振や一般消費不況など税収減の下で軍事費がこれだけ増えた結果、国家の借金はアメリカGDPの4倍という発表になった。アメリカの元会計検査委員長デイブ・ウオーカーが2015年に精査、発表した数字である。なお、「資本主義の下の経済は、これをきちんと制御できなければ必ず軍事化する」とは、世界経済学史に残る人類の知恵、遺産の一つだとも付け加えておきたい。

②そこから、今の原油ドル支払い体制を守るためにも、大きすぎる軍隊の存在意義を示すためにも、敵と戦争とがどうしても必要になっている国である。そこを世界戦略上は「アメリカの傘の下の世界安定、平和」と言い換えているに過ぎない。もちろん嘘を承知で。この嘘を承知というのは、イラク戦争で明白に示されたものと愚考する。ケネディ暗殺にしても、キューバ危機や9・11に関わるいくつか分かっている隠蔽工作についても、タリバンアルカイダとの過去の「愛憎関係」についても、この国には嘘が横行している。それも、国家の存立を左右するような大きすぎる嘘が。

③そして、こんな今のアメリカの最大懸念はこれ。軍事以外の自国物経済を金融が破壊して他国に譲ってきた後の国際貿易から、通貨危機などを創造して世界の金融搾取、金融による世界支配に励んできたが、中国が物経済で台頭し、その黒字分によって金融でも台頭し始めている。さらに、この中国の金は、元の保護制度によってアメリカは奪い取れない仕組もあるのだろう。ちなみに、ファーウェーを親のカタキよろしく敵視するのは、ここの5Gが間もなくGAFAのバブル株価を崩壊させる可能性があるからだ。ドイツのGDPをその株式時価総額が超えたと言われる現在のGAFAバブルは、原油=ドル支払い世界体制と並んで、金融帝国アメリカの生命線なのだろう。
 GAFAバブルが崩れれば、「パクス・アメリカーナ」、「アメリカによる世界の平和」は終わる。その金融・軍事世界支配の野望とともに。

④ちなみに、「物経済と金融帝国」というテーマをもう一歩つっこむと、以下。 
 アメリカは、原油と軍事、IT、食肉、穀物、医療など以外の物経済は捨ててしまった。その分、米金融による世界企業支配帝国を目指してきた。日英がその副官のように振る舞ってきたわけだ。そんな彼らから見れば、中国は物経済から出発して、金融にも手を伸ばした、恐るべき敵である。世界金融帝国建国に立ちふさがる唯一の敵。この国を己の金融帝国に喰らい込むことができなければ、アメリカGAFAバブルは終わる。

 これが米中衝突の真の姿なのだ。対するに、世界の普通の人々の職業という物は金融支配世界ではただ虐められるだけ、普通の物経済の中にしか健全な姿では存在しないのである。
 僕は金融世界支配をどうしても認められない。普通の人々の普通の給料、生活が端から無視されるからである。